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怖い話を怖くなくする

 

怖い話。

 

あなたは怖い話を聞いて背筋がゾクっとした事はありますか?

皆さんもちろんご経験済みと思いますが、果たして背筋がゾクっとしたその話を今、この場で聞いても同じ様に背筋はゾクっとなってくれるでしょうか。

2016年現在、残念ながら世の中にある怖い話、恐怖体験などはパターン化されているものがほとんどです。

深夜面白半分でドライブに行くと否が応でもフロントガラスに手形が付いてしまうし、ナースコールは誰もいない部屋からしか鳴らないのです。

怖い話というのは一回目のインパクトが最高潮なのであって、二回目からはぐっと威力が落ちてしまうもの。

亀田三兄弟を2日連続見かけた場合、2日目も変わらないテンションで三兄弟は見れないと思います。

興毅大毅はもういい、今は史郎を欲しているんだ。そういう気分なんだ。

そう思うことでしょう。

 

つまり 慣れ が来てしまうのです。

 

怖い話の場合、オチが一番怖がらせないといけない箇所ですからそこへ向かって一直線な展開となります。

そのためどうしても同じオチに対しては同じようなストーリー、同じような展開となる訳です。

ではこのパターン化した怖い話のオチを変えずに、ストーリーと展開をちょこっと変えれば

怖い話が怖くなくなるんじゃないのか?

背筋はピンと伸びるんじゃないのか?と私は考えました。

今日はリユースされまくったオチをリデュースしてやりたいと思っています。

リデュースの意味は自分で調べてみてください。

 

 

パターン1

起 部屋の壁に穴を見つける

承 中を覗くと真っ赤

転 大家さんに隣人の人となりを聞く

結 隣には目が真っ赤な人が住んでいた

 

これはよくある怖い話、聞きなじみも強いthe怪談。

この話のオチは「隣の部屋に真っ赤な目をした人が住んでいた」という部分。

真っ赤な目は想像しただけで薄気味悪い印象を与え、その真っ赤な目を前半部分に登場させ聞き手にクエスチョンを突きつけることにより後半の突然の登場にインパクトと話のつながりをもたせています。

この話のオチを変えずに怖さを消します。

 

 

方法 ー主人公を眼科医にするー

 

晴れて眼科医として独り立ちした私は新しく部屋を借りることにした。

駆け出しの眼科医である私に立派な病院を構えることなど到底かなわず、それまでの間この6畳1Kのこの部屋を自宅兼クリニックとすることにしたのだ。

玄関からベランダまでの距離でギリギリ視力検査ができる、そんな理由から6畳のこの部屋に目が留まったのだ。

いつかこの街すべての人間の目を診てやる、まだ見ぬその日まで、ここで目を凝らして待ってやる、そんな気持ちでいっぱいであった。

 

引っ越しを終え1週間ほどたったある日、私は部屋の壁に小さな穴を発見した。直径4センチほどの目の形をした穴。

今まで見落としていたこの穴、中を覗き込むと真っ赤であった。

(こ、この赤…まるで結膜下出血じゃないか!)

結膜下出血とは、結膜下の小さい血管が破れて出血し、白目部分がべったり赤く染まる症状のことだ。

原因は疲労、過度の飲酒、水中メガネの絞めすぎなどさまざまだが、通常数週間で自然に治まることが多い。ひどい場合は血栓融解剤などの注射を打つと早く治る。

職業病だろうか、研修医時代の経験からすぐに症状と対策が思い浮かんでしまう。

(でもなぜこんなところに真っ赤な穴が…)

 不思議に思いながらも私は一応血栓融解剤を注射しておいた。

次の日の朝、めざましテレビの台風情報からふと部屋の壁に目をやると、赤かった壁の穴はすっかり白に変わっていた。

見違えるように部屋に統一性が出てきた。

 

その時自宅兼クリニックのインターホンが鳴らされた。ドアを開けるとこの部屋の大家さん。

大家さんはギラギラした目で、老眼鏡を作りたいから視力検査をしてほしいと言った。

そんなのZoffでやれ、Zoffならおまえの視力も測ってメガネも作ってくれるのにと目で訴えながらも、一応初めての患者だし視力検査を行った。

検査中大家さんは私にこう言った。

「あなた、眼科医なのにメガネしてないなんて破天荒な眼科医だよね、…左。」

「ははは…上です」

こういうのを偏見というのだ。この人は視力が悪いのに人を外見で判断するタイプだ。

検査を終えて、大家さんが帰り間際で、先日の壁の穴の話をした。

大家さんは一部始終を聞き終えると、カッと目を見開き、

「隣のひとかもしれない!」と言ったかと思うと、突然部屋を飛び出し、目にも留まらぬ速さで隣のドアを叩きだした。

「佐々木さん!佐々木さん!」

「どういうことですか?」

「佐々木さん!佐々木さーん!治ったんでしょう!?生まれ変わった佐々木さんを一目見させておくれ!」

大家さんはまるで、私の問いかけも聞こえないかのようだった。この人は目以外にも悪いところがあるようだ。

「大家さん、一体どういうことなんですか?説明して下さいよ」

「実は、隣には真っ赤な目をした人が住んでいるんですよ!」

そういう大家さんは、キラキラした目をしていた。

 

 

 

パターン2

起 数人で心霊スポットへとドライブ

承 霊感のある友人の気分が悪くなる

転 霊に襲われ逃げ出し近くのコンビニへ

結 フロントガラスにおびただしい数の手形が

 

この話のオチは「窓ガラスに手形が付いている」という日常よくあるシチュエーションであり、場所やストーリーなどを変えてもそこさえ合っていれば十分怖いと思います。ポイントは霊に襲われるくだり。ここがないバージョンの話だと、手形が付く説得力が少し弱くなり、じわっとした怖さが残ります。

 

方法 ーありったけの力士を連れていくー

 

ぼくの名前は木村庄之助

夏のある日、大相撲夏場所を終えた序の口力士たちと、ひょんなことから心霊スポットへ行くこととなった。

丑三つ刻、集合場所へ僕の自慢のホンダ フリードで向かうと、そこにはすでに30人近い序の口力士たちが集まっていた。

残念ながらフリードはミニバンだ。5人乗りなので、運転手の僕を除いた4席をめぐって熾烈なトーナメントが行われた。

熱き戦いを制した4戦士と出発しようとしたのだが、26人の序の口力士たちの怒りのツッパリにより、フリードはベタベタになってしまった。

何とか力士たちを振り切り、僕たちが向かった先は廃墟と化した相撲部屋。

そこでは夜な夜なすり足の音や四股を踏んだ時の音が絶えず聞こえてくるという噂だった。

到着したものの、白ノ富士がなんだか、物言いがついた時のように不安げな顔をしている。

どうやら白ノ富士は霊感が強いらしく、この相撲部屋からは嫌な雰囲気がするのだという。

そういうのが勝負に影響しないといいけど。

5人が車の中で廃墟に入るのをためらっていると、廃墟からたくさんのすり足の足音が聞こえてきた!

スリスリスリスリスリスリ…

スリスリスリスリ…

 

僕たちが動けないでいると、今度は四股を踏んだ時の音が聞こえてきたのだ!

パンッ!……

……パンッ!

 

パンッ!……
……パンッ!

 

パンッ!……
……パンッ!

あまりの恐怖に僕たちは猫だましをくらった様に動けないでいると、だんだんと音が近づいてきた。

ヤバい。逃げないとヤバい。

僕の本能がそう言っている。

僕の心の中の土俵脇にいる審判たちもそう言っている。物言いがついたんだ。

言い忘れたが僕の心の中には土俵があるんだ。

すると突然、白ノ富士が泡を吹いて倒れてしまった!

待ったなしとばかりに、相撲部屋から幕内力士の幽霊達が車へ突進してきた!

それを見た序の口力士たちはパニック状態!

誰のまわしかもわからず、誰彼構わずすくい投げ出したのだ!

必死の思いでその場を離れ、僅かな灯りのついたコンビニ前で車を停めた。

彼らはようやく落ち着いたようで、逆光なのに集合写真を撮ってインスタグラムにアップしたりしていた。

その日はそのまま解散となってしまった。

後日、スクラップとなったフリードのフロントガラスには、おびただしい数の手形が付いていたという…

内側からも…外側からも…

 

 

パターン3

起 深夜に白いワンピースの女を発見

承 〇〇まで連れてってと言われる

転 到着すると女の姿が消えている

結 後部座席のシートが濡れていた

 

 

これはタクシー運転手がよく話すタイプの話。

普通なら乗せませんけどね、駅前とかに居ないと乗車拒否です。

実際問題これは出オチみたいなところがあって、「白い服の女」がオチなのかもしれませんが、一応「後部座席のシートが濡れていた」というのをオチとして話を進めます。

 

方法 ームチャクチャ遠いー

 

私は信じがたい体験をしてしまった。

夜遅く、1人の女性を乗せた。季節は冬だというのに、白いワンピースに裸足で、彼女は私のタクシーを停めたのだ。

「どちらまで行きましょう?」

私の問いかけに、彼女はか細い声で

「〇〇霊園まで…」と言った。

〇〇霊園?聞いたことない場所だった。

「すみません、私まだこの辺り詳しくなくて…よろしければ道順を案内して頂けませんか?」

「…わかりました…」

23:19 賃走(割増)

彼女の案内通りに車を走らせていく。

どのくらい時間が経っただろうか、ふと時計を見ると深夜3時をまわっていた。

おかしい…

いくらなんでも走りすぎている…

ざわ… ざわ…

辺りも見覚えは全くない。不安になった私は彼女に質問してみた。

「あとーどのくらいですかねぇ」

「…もうすぐです…」

「そうですか…」

更にそれから2時間が経過した。

相変わらず車は走り続けている。日の出頃には帰れると思ったのだが、辺りは家一軒見つからない山道だ。

もはやここが何県なのかも想像がつかない。

「まだかかりますか?」

「…もうすぐです…」

「はぁ…」

とても…正気の沙汰とは思えない…!

更にそれから3時間が経過した。圧倒的だ。

時刻は午前8時。

さすがに疲労困憊。圧倒的疲労である。

もはやアクセルを踏む足に力はない。

さっきから…足が震えている…!

すると突然、女性が大きな声をあげた。

「ここで停めて!」

私は驚きながらも急ブレーキを踏み込んだ。

危なかった…

 圧倒的疲労からか、あと1秒でもブレーキを踏むのが遅ければ墓石に突っ込んでいた。

どうやら〇〇霊園で間違いなさそうだ。

なにはともあれ無事に仕事を終えた…

メーターを見ると、23万8160円と記載されている。

こんなの初めてだ。圧倒的初めて。

良かった…私は精算ボタンを押した。

「お客さ…」

さっきまでいた筈の女性が居なくなっている!

状況を理解するのに暫く時間がかかった。

これが現実…!

居なくなった女にふつふつと怒りがこみ上げてくる。

金は命より重い…!

圧倒的怒りと圧倒的絶望の中、財布を落としていないかと後部座席を調べると、あの女性が座っていた部分のシートが濡れていた。

「キンキンに冷えてやがる……!」